研究者を目指すという熱病

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現在のわたしが編入試験の受験生にお薦めする法律書

  前回のエントリーでは、

hougaku-0106.hatenablog.com

私が編入試験の受験生だった当時、実際に使用した法律書についてコメントした。上記のエントリーで言及した法律書の中には、現在でも編入志望者にとって必読文献となる法律書が少なくないというのが私の考えである。

 ただ、編入試験対策という観点からも優れた法律書であるにもかかわらず、私が編入試験の受験生であった当時、まだ出版されていなかった本や、当時すでに出版されていても法学にふれはじめたばかりの私の情報収集力ではアクセスできなかった法律書が数多くある。

 そこで、本エントリーでは前回のエントリーで言及していない、現在の私が法学部への編入を目指す受験生にお薦めする法律書を紹介できればと思う。いかなる文献で勉強を進めればよいかについて、迷っている方にとっての一助となれば幸いである。

 

南野森・内山奈月憲法主義 条文に書かれていない本質』(PHP研究所)

 憲法とは何か、立憲主義とは何かを理解するためにどの本を読むべきか、と問われれば、まず本書を挙げなければならない。本書は、当時AKBで高校生の内山奈月さんが九州大学の南野森先生による講義を受けるという形式での、二人の「対話」を取り纏めた一冊。憲法の入門書として、文句なしのまじでBest of Bestの一冊。

 本書の特徴は、第二次安部政権が誕生し、ある政治局面で極めてイデオロギッシュになりがちであった「我々」の時代の中で、政治的に、価値中立的に、「憲法」と「立憲主義」を説明することを試みた点にある。

 勿論、この時代、この日本において「あるべき日本国憲法」を論じるとき、おそらくどれだけ注意深くあろうと意図せぬ形で、あるいは必然的に、「政治的にイデオロギッシュな領域」に踏み込むことになると位置づける論者もいるのであろうが、しかし①この「あるべき憲法論」と、②そもそも「憲法」とは、「立憲主義」とは何かを理解することとは全く別問題であり、区別しなければならないところ、本書は華麗なまでに後者を理解するために必要な「対話」と「叙述」に限定している。党派性を超えて、幅広い読者に向けて構成された渾身の1冊であることがわかる。

 憲法の入門書は多数、存在するがこれ以上の「最適書」は存在しない。

 ただし、かなり褒めすぎたので一応、「入門書」として留意しておくべき点をフェアに紹介するならば、2016年の参議院選挙の直前に、父に本書を薦めたところ、高校を卒業してから「仕事一本」で生きてきた父は、憲法統治機構にかかる本書の説明について「高校の頃の公民の授業みたいでちょっと勉強し直さないと難しい」と言っていたので、本書を読むのと並行して、あるいは事前に高校の授業科目である「政治経済」の基礎知識を習得しておく必要がある。

 最後に私の個人的経験を話したい。院生として留学生のチューターや、学部1回生の後輩に、「なぜ憲法があるのか」「憲法って結局、何なの」「具体的にどういうときに憲法が問題になるの」といった質問をされた経験が何度かある。率直なことを言えば、私も院生となってしまった今、なぜこのような質問が出てくるのかが理解できない。例えば留学生や後輩が受講している授業がおそろしく分かりにくいのか、それとも彼らがおそろしく授業を理解しようとせずに私のところにやってきたのか、彼らは授業に出たというが実は休んでしまっていたか、などと色々とその原因を推測するけれども。これらの疑問の淵源がどこにあるのかについては些か気になることではあるが、ひとつ、私にとってはっきりとしていることがある。「この世界で『憲法主義』を読まないこと、知らないことなどにもはや価値などない、黙って『憲法主義』を読め。」ということである。

 なお文庫版が、2015年に出版されている。

 

 

 

 随時、更新予定です。本記事は少しずつ更新するつもりです。