研究者を目指すという熱病

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編入試験における英語の和訳問題で求められること(?)

 法学部の編入試験の多くの大学では、ある程度まとまった分量の英文の和訳を試験で課される。私が編入試験を受けた当時、受験対策として用いた過去問では、法学に係る英文が出題されていたり、およそ法学とは関係のない社会科学に係る英文や、(おそらく)新聞・雑誌記事の時事問題に係る英文が出題されていた。

 編入試験が目前に迫った8月になっても、私は、過去問によって、かなりその出来にばらつきがあり、全く読めなかった英文が幾つもあった。思えば、会社法所有と経営の分離について簡潔に叙述された英文が過去問として出題されており解いてみたのだが、当時の私は、正直ほとんどまともに会社法の勉強をしていなかったし、英語による法学の専門タームを、『英米法辞典』などを用いて暗記することもしなかったので、読めなくて、和訳できなくて当然だったと思う。時事問題についての英文はある程度、読めるようになっていったとはいえ、途方にくれるような思いで、どこからどこまでの単語を覚えて、過去問以外にどこまで英文を読めばいいのだろう、と思って悩んでいた。

 編入試験の受験を間近に控えている方の中には、私と同じような気持ちを抱えている人もいるのではなかろうか。

 確かに、英文の前後の単語さえ分かっていれば、自分が覚えていない英単語(ここではテクニカルターム)が出ても内容をある程度予測できる、というアドバイスは、おそらく、ある程度のざっくりとした内容把握が問われる、一般受験における英語の選択問題においては的を射ていると私も思うし、何より気持ちが楽になる。

 だが、実際、編入試験で過去問を解き、例えば、予備校や編入(前)に所属する学校の先生に添削をしてもらって、自分の和訳が、ある一文のテクニカルターム(専門用語)の誤り、見落とし、知らなかったことに起因する「誤訳」した和訳内容に引きずられて、その後の和訳(した内容)が、原文の本来の内容から徐々にズレていき、結果として「悲惨な和訳」になって、落ち込んでいる人もやはりいるのではないかと思う。

 実際、受験生だった当時、私はこの現象に悩んでいた。誤訳したと自分では気づいていない一文についての和訳の内容と整合的にそれ以降の英文を読もうと努力すればするほど、その誤訳による歪みとズレが、英文の終わりに近づくごとに、大きくなっていくことに、当時の私は悩んでいた。一文、一文を丹念に精読し、和訳することが課題なのであるから、ざっくりとした内容理解で、自己の読解を誤魔化すこともできなかった。

 だから、単語帳や、単語カードを作って必死に覚えようとした、尋常ならぬ苦しむを抱えて。

 だが、実際にそのころ私は、編入予備校の講師であり、また大学の助教で、現在は常勤の准教授として就職された先生に、編入試験では「構文さえ外さなければ、減点なんてそんなにないから、あんまりナイーブにならなくていいよ。」という趣旨のアドバイスを貰っていた。

 当時は、ほんとかなあ、とぼんやり思っていたし、不安を拭いきることもできなかった。構文を外さない受験生が10人いて、合格者枠が5枠しかいないとすれば、結局は単語力や日本語の表現能力の問題に帰着するのではないか、と考えていた。

 もちろん、もし仮に他の受験生が絶対に構文を外さない受験生で試験会場が埋め尽くされているとすれば、最後は単語力や日本語の表現能力がモノを言うと思う。だから、完全に、記事を読んでくださっている方の不安を打ち消すことはできないと思う。

 しかし、今の私の立場から言えることを言いたい。現実に大学や大学院での、外国語文献の購読ゼミでは、辞書を用いながら、いや辞書を用いてもゼミで相談しながらでなければ、テキストを読み進めることのできない文献を、丹念に読み進める。

 この大学での外国語文献への取り組み方を考えると、「辞書なしでテクニカルタームも含まれる英文を読まなければならない試験で、仮に誤訳したとしても、構文さえ読み取れていれば、当然に、当該テクニカルタームと英文の内容に係る専門知識を習得すれば、正確にその英文を読むことができるようになるし、修正することができる」という推定的なテーゼを導き出すことができると、今の私は思う。

 少なくとも、過去問の英文に対して、和訳を作ってみて、ある1文、しかもある英語のテクニカルタームの訳し方と内容を知らなかったために、その後の英文で誤訳が生じた、と悩んでいる方は、いやむしろ下線部の誤訳の原因について気づいている人は、全く悩む必要がないと私は考える。当時、私を指導してくださった編入予備校の先生もこうした趣旨で、私に「構文さえ外さなければ、減点なんてそんなにないから、あんまりナイーブにならなくていいよ。」とアドバイスしてくださったのではないかと想う。

 むしろ、その気づきをしっかりと持っており、より高いレベルでの和訳を欲して悩みを抱えているあなたは十分に大学で、一般教養の英語の授業や、法学・政治学に係る専門英書購読に係る授業に出席し、ついていけるだけの能力があると、私は考える。そして、このレベルに達している人は、あまり神経質にならず、ナイーブにならずに、自分が知らなかった単語・専門的なテクニカルタームを暗記し、またさらに色々な構文をしっかりと押さえて、編入試験に挑んでほしい。

 一方で、まだまだ過去問を解いている最中に、構文を取れなかったと嘆いている人は、少しでも構文を取り違わない精度を上げていってほしい。まだ七夕だ。同志社や香川、金沢大学などの法学部の試験まで二ヶ月と数週間は少なくとも残っている。僕も、八月から必死にがんばり、試験直前期の10日間くらいで一気に、英文が読めるようになった時期がある。『基礎英文問題精講』という本がボロボロになるまで復習し、過去問を解いて読み違った、見落とした構文があれば『英文解釈教室』といった本でしっかり調べ直すことを繰り返す毎日を、秋が終わりを告げるまで続けた。英語が、いきなりふっと読めるようになる時期は、誰にでもある。必死に最後までがんばってほしい。

 ところで、私はドイツ語が全然読めない。大学院で、必死にもっと読めるようになるためにがんばっている。急に読めるようになる時期が再び、来ることを信じて私はがんばっている。だから、私もがんばるから、みなさんも一緒にがんばってほしい。そういう意味では、私たちは「仲間」だと言えるかもしれない。

追記)こういう辞典が存在するという情報に、多くの人がアクセスできるようにするために、一応、いわゆる法律用語の英語辞典を、このブログで紹介しておく。ただ、高価な本が少なくない。ぜひ、自治体の図書館や大学図書館を(市民)利用して手にとってみてほしい。