研究者を目指すという熱病

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コロナウィルスが蔓延する状況下での大学院の新入生ガイダンスの実施

 コロナウィルスの感染状況が悪化していく中で、先週-4月1週目に-、私が開催の責任者として大学院の新入生ガイダンスを実施した。この記事では、私自身の備忘録として、大学院の新入生ガイダンスの実施に関して思ったこと、感じたことをそのままに書きとどめていきたい。

 さて、大学院の新入生ガイダンスというのは一般に、おそらく、教員または事務が主催する大学が多いのではないかと思うが、私が所属する大学の法学研究科では、例年、法学研究科の院生が構成員である院生協議会がガイダンスを主催している。この院生協議会の委員長である私は、2020年度のガイダンスの開催における責任者であった。

 大学の事務からは、①新入生の数が(5人未満という)少人数であること、②院生協議会が主催するガイダンスであることに鑑みて、院生協議会側があくまでガイダンスを実施するのであれば、その延期または中止を要請することは行わない、という連絡を、ガイダンス実施予定日の2週間ほど前に連絡をいただいていた。

 それゆえ、ガイダンスを実施するかを決定する必要があった。

 率直に言えば、ガイダンスを実施するかどうかについては非常に迷った。

 まず、上記の大学事務による②の理由に係るメール文面から、もし、当該ガイダンスの場でコロナウィルスの感染者ないしクラスタが発生してしまった場合には、大学側から私が責任を追及され(う)るのではないか、という懸念を抱いたからである。また、率直に、このウィルスが市中に氾濫している時期に大学まで新入生に足を運んでいただくことについて、非常に悩んだ。

 しかし、結論としては、去る4月1週目にガイダンスを実施することに決めた。

 その理由は、次のようなものである。

 私が、ガイダンスを実施するかを最終的に決定しなければならなかった時点で、法学部は、2020年度の前期授業開始日を2週間、延期(4月23日を授業開始日とすること)することに決定していた。

 これに対して、法学研究科(大学院)に関しては、院ゼミが基本的に教員である先生ときわめて少人数の院生のみで実施されることを理由に、大学院の講義を担当する教員と当該講義の受講を希望する院生との相談により各々の講義につき、授業開始日を決定するという取り扱いをすることが決定された。それゆえ、担当する教員の意向によっては、当初の前期の授業開始日から、すなわち、4月9日から大学院の講義が行われることもありえた。

 このように、場合によっては4月9日から大学院の講義が開始されることを考えると、-私が大学院のガイダンスを実施すると決定した段階で、法学部の教員主催の学部ガイダンスも前期の授業が始まる1週間前に開催されることが決まっていたことに足並みを揃えて-少なくとも授業開始日の1週間前には大学院のガイダンスを実施する必要があるのではないか、と考えた。今年度は、大学院の新入生がみなM1であったこと、この新入生のうち、中国からの留学生が一名、本研究科に入学することを予定していたことから、在学生である院生が彼ら/彼女らと対面でコミュニケーションをとることに重要な意義があると考えたことを、ガイダンス実施の第一の理由として挙げることができる。すなわち、「新入生の不安を和らげる」ということが、最たる実施理由であると整理できる。

 また、大学院ガイダンスを実施した段階で大学図書館の利用が一部、制限されていたことに鑑みて、新入生の研究生活のスタートダッシュのために、法学研究科所属の教員および院生(のみ)が基本的に自由に利用することのできる「資料室」の利用案内を本ガイダンスの中で行うことを急いだほうがよいと考えたことも、ガイダンス実施の理由としてさらに挙げることができる。さらに、院生部屋の鍵の新入生への引き渡しもその理由として挙げることができる。現状、一人部屋または2人部屋となっている院生部屋の鍵を新入生に引き渡しをしておけば、少人数の院生部屋で安定的な研究生活を送ることができると考えたからである。

 

 その上で、大学院ガイダンスの開催にあたっては、次のようなコロナウィルスの感染予防対策を講じた。

・いわゆる大教室における(参加者と実施者とをあわせて10人未満での)少人数でのガイダンスの実施

・マスク・消毒液の配布

・換気の徹底

 

 さて、ガイダンスの実施にあたっては、上記のコロナウィルスの対策を行った。

 しかし、実施した後になっても、迷いがないわけではない。

 というのも、ガイダンス実施後に大学院の遠隔講義を受講するために、SkypeやZoomなどの会議通話サービスを試してみたところ、スマートフォンのカメラを利用することによって驚くほど円滑にビデオ通話をすることができたからである。(私がガイダンス当日に院生に配布した)ガイダンス資料を事前にメールを通じて配布した上で、上記の会議通話サービスを利用することによって大学院の新入生ガイダンスを実施することもできたのではないかと思う。また、院生部屋の鍵の引渡しにも、別の手段を講じることもできたと思う。

 率直に私の心境を述べると、ガイダンスの実施に関していかなる判断が正しかったのかについて、私は悩んでいるままである。

 

 最後に、本ガイダンスが院生協議会主催であることを念押しするようにも読める文面のメールが事務方から来たこととの関係で、一点だけ書いておきたい。

 今年度の院生主催のガイダンスでは、法学研究科事務方の大学職員が大学院入学・授業履修関係の資料の配布した上で、その資料に関して必要な説明を行うために、ガイダンス冒頭の10分程度を使用した。

 このように事務方が院生協議会主催のガイダンスを相乗りするような形で活用するのであれば、今後は、院生協議会と法学研究科事務との共同開催という形式でガイダンスを実施することにしたほうがよいのではないかと考える。なぜなら、ある種のリスクの伴う判断を、院生(側)のみが負担する必要がなくなるからである。また、院生と比較すれば豊富な人員・(遠隔での会議通話などの)設備を有する大学事務側が主催側としてガイダンスに参加することによって、より確かなコロナウィルス予防策を講じた上で、ガイダンスを実施することが可能となるのではないかと考えるからである。

 なお、私が所属する法学研究科では、伝統的に院生協議会が院生ガイダンスの実施を担ってきたので、ウィルスの感染状況が深刻化した3月に唐突に、ガイダンスの実施の役割を唐突に事務側に委ねるのは、事務側の負担が増えることなどに鑑みると、やや無理があると-そして信義則にも反するのではないかと-判断した。

 さらに、ガイダンス実施の役割を院生(協議会)から大学の事務側に委ねることができなかった理由として、とりわけ、常勤で雇用されている、経験豊かな大学事務職員が中心となって学生に対する窓口業務が運営されているわけではないという昨今の大学の予算・人事状況によ(因)って、有期雇用の大学職員よりも 院生のほうが、履修関係や学生が利用できる制度についての情報に精通しているという事情を挙げることができる点についても、ここで最後に言及しておきたい。

 

 おわりに) 

 さて、今回のガイダンスの実施は、本当に労力を要する仕事でした。

 正直、これらの一連の調整のせいで、随分、疲れましたし、色々なことを考えました。来年の春には、コロナウィルスが収束していることを祈っています。

追記)学部の授業はGW明け以降から遠隔授業に延期され、院生も含めて大学のキャンパスは原則として入構禁止になってしまい、法学部・法学研究科事務職員も暫くの間、在宅勤務となってしまいました。無事、ウィルスが収束してくれることを祈っています。

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