研究者を目指すという熱病

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法学部の編入試験で実際に提出した志望理由書

 今回の記事では、法学部の編入学試験において要求される志望理由書をどのような形式で提出すればよいか迷っている方の悩みを少しでも解消することを目的として、私が編入試験の受験生だった当時、実際に、ある大学に提出した志望理由書をアップしたいと思います。この記事は、2020年10月に大幅に改訂したものとなっております。

 この記事に掲載する志望理由書は、今振り返ってみると、非常に拙いクオリティのものであると思います。実際に、目を通していただければわかるとおり、次の志望理由書には、例えば、なぜ貴学に編入しなければならないのか、といった点を十分に説明できていないと思います。もちろん、敢えて過去の自分を擁護するために言い訳をすれば、当該大学が要求する志望理由書は800字以内で提出しなければならず、その制約の中で、なぜ私が法学という学問に関心を抱いたのか、を説明することに力を注いだからだと思います。

 実際、私が通っていた(いわゆる)編入予備校では、法学部への入学を志望するにあたって、なぜ法学に関心を持ち、その法学の中でも、いかなる法領域に関心を持っているかについて、志望理由書に記述するよう指導されていました。後述の志望理由書の中で、私が、高校生の頃に初めて手にとった長谷部先生の著書に言及し、その著書から法学に関心を抱いたことを志望理由書に書いたのも、私が法学に関心をもった理由を具体的かつ詳細に説明するためでした。限られた字数制限と、編入予備校による指導というこれらの背景のもとで、なんとか作成することができたのが、下記で掲載する志望理由書です。

 ところで、後述の志望理由書を提出した大学では、その志望理由書を用いて、面接試験が行われました。下記の志望理由書をご覧になれば明らかであるとおり、志望理由書には、当時の私が公務員志望であることに一言だけ触れていました。実のところ、その言及が、面接試験の場で非常に役に立ちました。

 どういうことかというと、志望理由書の記載(だけ)ではたしかに、なぜ貴学に編入しなければならないのか、という説明を十分に行うことができていないのはすでに述べたとおりですが、志望理由書に公務員志望であることを示したことにより、面接試験の場で、公務員就職率が非常に高い貴学(志望大学)法学部への編入がどうしても必要であるということを、面接を行ってくださった先生方の前で口頭で説明することができました。その結果、(ある意味では)志望理由書により、貴学法学部への編入理由を説明することができたといえると思います。

 志望理由書の入試での活用方式は大学によって異なると思いますが、このように少なくとも私自身は、まず、なぜ法学部に編入したいかを説明することを最優先し、次に、志望大学でなければならない理由について簡潔に言及しておくという戦略をとり、結果として合格することができました。

 私は採点を行う先生方ではないので上記の戦略がすべての場合において正しいというような断言はそもそもできませんが、志望理由書の一つの作成例として、これから志望理由書を書こうと考えているみなさまの参考となれば幸いです。また、受験直前期にとりわけナーバスになっている受験生によせて、このレベルの志望理由書でも大丈夫なんだ、と少し緊張した気持ちを和らげることができれば嬉しいです。個人的には、志望理由書よりも、英語や法学・政治学などの試験科目の勉強に力を注ぐべきだと思います。

 

 では、実際に私が、ある地方国立大学の編入試験の志望理由書として提出したものを掲載しておきたいと思います。次のとおりです。ご確認ください。

 

「私は、現在、○○に在籍し、実定法を初めとした法学の基礎を学んでいる。その学習の過程で特に、関心を持ったのが憲法の授業であった。立憲主義とは、憲法を制定し、それに従って国家が統治を行うという制度であり、憲法は、国家と個人の関係を規律する法規範である。

 私は、法学を学ぶまでは、憲法の必要性を強く感じたことなどなく、どちらかといえば、私人間の関係を規律する刑法や民法のような法規範が私たちの生活において、より身近なものであると考えていた。

 しかし、この私の考えというのは全くの間違いであった。憲法は、私達の安全で豊かな生活にとって、明らかに不可欠なものである。火事がなければ、消防士の真の必要性を感じることなどない。それと同様に、私自身も、市民革命以前の市民の様に、国家権力から不当に自分の権力を奪われたこともなかったので、立憲主義に真の必要性を感じることもなかったのだろう。つまり、立憲主義が日本において、比較的、機能しているが故に、私がとりわけ憲法の必要性を感じなかったのである。

 しかし、現在においても、個人が持つ権利を全ての者が、享受できているわけではない。憲法で保障された民主主義に基づいて決定された法や命令によって、個人の権利が不当に奪われるケースは依然として存在するのである。東京大学の長谷部教授は、「憲法によって規定された、個人の人権と民主主義は衝突する要素であることに留意しなければならない」とし、その上で、「民主主義によって決定すべき問題と、そうでない問題が存在する。その線引きをするのが憲法であり、立憲主義という制度である」と述べている。

 貴学への編入後は、私は大学卒業後に行政に携りたいと考えているので立憲主義を中心に実定法の深い知識を得たいと考えている。実定法を深く理解する事というのは、善き公務員となるためには不可欠なことであると考えている。」

 

2021年10月23日の追記 

 この志望理由書を提出したのは、香川大学です。

 受験からかなりの時間が経過したこと、私自身の匿名性を気にしなくてもよいと思うことから、明らかにしたいと思いました。香川大学の受験を考えられている方は、ぜひ参考に供していただければと思います。

 

hougaku-0106.hatenablog.com

 また、自分が編入試験を受験するために利用した法学・政治学科目の参考書をまとめたのが以下の記事となります。

hougaku-0106.hatenablog.com

 

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 以下のリンク先の新書が、上記の志望理由書を書く際に引用元である本となります。